★トッテナムとのノースロンドンダービーでフル出場の冨安は攻守に存在感を見せて勝利に貢献
試合は前半セットプレーからの2得点とサカのカウンターから個人技の得点でアーセナルが3対2で勝利。ボール支配率ではアーセナルを上回ったトッテナムは後半2点を返すもあと一歩及ばず。冨安は左SBでスタメン出場を果たし攻守に渡り存在感を見せてフル出場を果たした。
scene①洗練されたコーナーキックから2得点
この試合、アーセナルはコーナーキックから2得点をあげている。キーパーソンになっていたのがベン・ホワイトだ。ホワイトはコーナーキックの際、相手GKヴィカーリオの前に立ち自由に動くのを封じている。前半15分の1点目の右コーナーキックはサカがキッカー。左足で鋭いボールがインスウィングでニアに蹴り込まれたがヴィカーリオの前にホワイトが体を入れて動きを封じていた。記録はホイビアのOGだがヴィカーリアが前へ出れなかったことと冨安がホイビアに体を寄せて思うようにクリアさせなかったからおこったOGだ。前半38分の3点目の左コーナーキックはライスがキッカーでこれもインスウィングのボールだったが、ここでもホワイトがヴィカーリオの前に立ち動きを封じていた。通常ならヴィカーリオが前に出てキャッチできていたボールにも思える。当たり前だがコーナーキック時のディフェンスはGKが中心になる。そのGKの動きが封じられていては良い守備は不可能だ。DFとの守備の約束ごともあるだろうがこれでは対応できない。
アーセナルはセットプレーコーチとしてニコラス・ジョヴァーを2021年から招聘している。ジョヴァーはセットプレー界のトップランナーとも呼べる存在で、2019年~2021年までシティでグアルディオラの元でセットプレーコーチをつとめていた。2019-20シーズンのシティはセットプレーから得点が前年の「11」からリーグ最多の「17」に増加した一方で、セットプレーからの失点率は前年から20パーセントも激減した。この試合でもその効果が如何なく発揮されてコーナーキックから2得点。コーナーキック時にはアルテタ監督より前に出て指示を送る姿が印象的である。
scene②冨安vsクルゼフスキー、ジョンソン
この試合、冨安は左SBに入り守備ではクルゼフスキーとジョンソンとマッチアップしている。クルゼフスキーに対しては逆サイドまで追いかける徹底ぶりで決定的な仕事はさせなかった。クルゼフスキーも厳しく寄せる冨安を背負いながらボールをキープする場面もあったが冨安の勝利と言って良い。後半途中からはブレナン・ジョンソンとマッチアップしたが、こちらは少し手こずった感がある。スピードのあるジョンソンに対して縦を警戒する冨安に対して中に侵入される場面があった。そこにはすぐにアルテタからの指示があり、マルティネッリが戻って二人で守備をすることで改善された。
ビルドアップの攻撃時には中に入りボールを受けたりサイドに張ってボールを受けたりと臨機応変に対応していた。この試合に限ってはトッテナムの守備陣形的にサイドに張ってボールを受けるシーンが多かった。アーセナルのセットプレーでは脅威になっていた。得点シーンのコーナーキックもそうだが、後半開始早々のフリーキックでは裏に抜けてダイビングヘッドを放っている。
scene③トッテナムのハイライン、ビルドアップ不発
トッテナムは攻撃時はSB2枚が中に絞ってビルドアップする。当然、アーセナルのWG2枚も中に絞って守備をする。そうなると自然に両ワイドが空き、2センターバックからWGにボールが配球される場面が多かった。ただ、この配給でセンターライン付近でボールを受けてもゴールまで距離があり守備が間に合うので脅威にはならない。トッテナムのビルドアップの肝は中から外である。だからこそSB2枚を中に絞らせているのだが、その中が機能しなかった。アーセナルがそうさせなかったという言い方が正しいかもしれないが、全くと言っていいほどベンタンクール(前半で交代)、ホイビア、マディソンに有効なボールが配球されなかった。
守備時のハイラインだが、ファン・デ・フェンが何度かスピードを活かして裏のスペースをカバーしていたが、2点目のサカのカウンターは防げなかった。トッテナムのハイライン、ハイプレスは攻撃的で観客を魅了する戦術で私もコラム『トッテナムの「ハイライン」戦術が観客を魅了する理由』https://premierleaguecolumn.com/232/を書いたくらい好きな戦術であるが、今節のアーセナルには通用しなかった。
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